日蓮宗。山号は小倉山。洛陽十二支妙見めぐり酉の寺。
開山は究竟(くきよう)院日��(にっしん)上人（権大納言広橋国光の息男）。
１５９５年（文禄４年）豊臣秀吉が建立した東山方広寺大仏殿の千僧供養への出仕・不出仕をめぐって、京都の本山が二派に分裂したとき、上人は不受不施の宗制を守って、出仕に応ぜず、やがて本圀寺(ほんこくじ)を出て小倉山の地に隠栖し、常寂光寺を開創した。
当時歌人としても著名であった日��(にっしん)上人に、歌枕の名勝小倉山を隠栖地として提供したのは角倉栄可(えいか)と了以(りょうい)である。当時、小倉山一帯の土地は、高瀬川開削で名高い角倉一族の所有であった。１６０６年了以が丹波の物産を京都に運ぶため、大堰川浚鑿(おおいがわしゅんさく)工事を行ったとき、上人の大檀那であった備前伊部の瀬戸内水軍の旗頭である来住一族に依頼し、了以の事業を支援した。いまの嵯峨の夏の風物となっている保津川下りの起こりである。()

（上）仁王門　もと本圀寺(ほんこくじ)客殿の南門として貞和年間（南北朝時代）に建立されたものを、１６１６年に移築され、１８２５年と１９７６年に解体修理されたもの。
仁王像は丈七尺、若狭小浜の長源寺より移されたもので運慶の作と伝えられる。()

（上）本堂　第二世通明(つうみょう)院日韶(にっしょう)上人（日野大納言輝資の息男）代に小早川秀秋の助力を得て、桃山城客殿を移築したもの。()

（上）多宝塔　第二世日韶(にっしょう)上人代に建立されたもの。後に霊元天皇より宸筆並尊閣(へいそんかく)という三字額の下賜を受け掲げている。()

（左上）妙見菩薩　北極星または北斗を象徴した菩薩であることから、妙見尊星王、北辰妙見菩薩などといわれる。此処の妙見菩薩は洛陽十二支妙見めぐりの一つに数えられている。
慶長年間（１５９６〜１６１０年）保津川洪水の際、上流から流れついた妙見菩薩像をふもとの角倉町の一船頭が拾い、久しく同町の集会所に祀っていたが、享和年間（１８０１〜１８０３年）に境内に遷座されたもの。御所から西の方角に当たることから「酉の妙見菩薩」となり、江戸時代末期から昭和初期にかけては、京都市内だけでなく関西一円から開運、厄除けの御利益を願う参拝者で賑わった。()

（右上）歌仙祠(かせんし)　もとは今の仁王門北にあった藤原定家の小祠を創立当時に山上に移転したもので、現在の建物は１９９４年（平成６年）平安遷都１２００年事業として改築したもの。歌仙祠(かせんし)とは、１８９０年（明治２３年）定家卿６５０年祭に当たって祠堂改築の頃、富岡鉄斎が命名したもので、扁額に奉掲されている。祠内には定家卿、家隆卿が祀られている。()