(上)鍾馗神社 鍾馗は主に中国の民間伝承に伝わる道教系の神である。唐の玄宗皇帝が病の床につき、夢の中で現れる鬼に悩まされていた。その夢の中で鍾馗が鬼を退治するのを見る。玄宗皇帝が正体を尋ねると、「自分は終南県出身の鍾馗。官吏になるため科挙を受験したが落第し、そのことを恥じて自殺した。だが高祖皇帝(唐の初代皇帝)が手厚く葬ってくれたので、恩に報いるためにやってきた。」と告げた。夢から覚めた玄宗皇帝は病が治っていることに気づき、夢で見た鍾馗の姿を絵師に描かせ、疫病除けや受験の神様として定めたという説話がある。 日本では小さな民間信仰のひとつとして主に京都や奈良の町屋、一階の上の中屋根に置かれているところが多くみられ、向かい合わせの鬼瓦や同じ鍾馗から弾かれた災いなどをはね返し、家を守っている。
鍾馗神社がここ若宮八幡宮に存在する理由として、陶祖人・椎根津彦命が祀られている陶器神社があり、瓦からできている鍾馗も同じ焼き物であることから、京都市内唯一の場所として若宮八幡宮宮司の協力を得て建立された。御神体の鍾馗は災い除けとして鬼門の方向である北東に向けて安置されている。 京都市東山区ではたくさんの鍾馗を見かけることができ、家を守る以外にまちの生い立ちを伝えてくれる重要な存在でもある。そして同じまちを守る地蔵には地蔵盆があるのになぜ鍾馗にはそのような感謝する祭事がないのか、この素朴な疑問から始まり、鍾馗を正式に神格化して感謝する神社、そして鍾馗祭りが実施された。
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